音楽の未来に暗い影を落とす「インボイス制度」に反対します。
2023年の10月からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が施行されます。
私たち日本音楽家ユニオンは、昨年10月に全国の音楽家を対象にアンケートを実施し、この制度の認知度や影響を調査しました。その結果、この制度はフリーランスが多くを占める音楽家へ多大な文化的、経済的な影響を及ぼすことがわかりました。
フリーランスの音楽家の収入は、数十年にわたりほぼ横ばいか右肩下がりです。そこに昨今の物価高が追い打ちをかけ、生活はさらに苦しくなっています。
アンケートでは、インボイス制度導入は経済的負担が増すだけでなく、専門家でも理解が難しいとされる消費税の納税処理に多大な時間と労力を個々の音楽家に強いるものであり、音楽活動の時間が削られることを懸念する声が多数寄せられました。
これらの影響はフリーランスだけではなく、本務とは別に個々で演奏活動や教授業をしているオーケストラの楽団員、更には財政基盤が脆弱な小規模の芸術団体、仕事を発注する事業者にまで波及し、組織の維持、存続に関わる問題となっています。
インボイス制度導入にあたり、フリーランスをはじめとする中小零細事業者を保護するため、消費税を外税とするような政策誘導もなく、単に事業者との個別交渉に委ねられていることから、仕事を失うことを覚悟した上で交渉に臨まざるを得ないのが実情です。
そもそも、免税事業者が受け取る消費税=益税のようにいわれていますが、「報酬の一部」であることは確定判決や国会答弁でも明らかです。
これらのことからだけでも、インボイス制度導入がコロナ禍から立ち直ろうと必死にとりくんでいる文化芸術産業の復興を著しく阻害し、かつ、経済的に不安定な状態にある実演家、芸術団体、事業者に致命的な打撃をもたらす危険な制度であると考えます。
国は「文化芸術立国」を唱えていますが、この制度はそのスローガンとは全く逆の結果をもたらすことになるでしょう。日本音楽家ユニオンは音楽家の生活を守るためだけではなく、日本の文化芸術を守るためにもインボイス制度に明確に反対します。
2023年4月
日本音楽家ユニオン